泣きたい夜には…~Shingo~
決意



トゥルルル…


突然、俺のスマホが鳴った。課長からだ。


やべぇ…


「はい、成瀬です」


病院の外に出ながら電話に出る。


課長はなかなか俺が戻って来ないので、怒り心頭の様子。


向井先生をひとりにしてはおけないが戻らないわけにはいかない。


「申し訳…あっ…」


いつの間にか俺の後ろにいた向井先生にスマホを取り上げられ、


「もしもし、お電話代わりました消化器内科の向井です。

今、成瀬さんに例の治験のデータ処理を手伝ってもらっていまして…

はい…教授が出張中なものですから立て込んでいましたのでご連絡が遅くなり申し訳ございません。もうしばらくお借りしてもよろしいでしょうか?

はい、あ、そうですか!ありがとうございます。では、失礼いたします」


先生は礼を言い、電話を切ると、


「今日は直帰でいいそうだ。だから私に付き合ってくれないか?」


先生はペロッと舌を出し、肩を竦めて笑った。



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