クローバー的恋事情
「そんな男は、やめとけ。もっと葵に合ういい男がいるさ。藤沢って男は、運命の人じゃない」


藤沢さんは、運命の人じゃない。運命の人は他にいる。

兄に断言されて、目が覚めた思いがした。


「そうか、運命の人じゃないんだ…」


「あはは。本当に、葵は思い込みが激しいんだから。とりあえず今は、仕事を覚えることに専念したらどう?社会人1年生」


そうそう、今日から社会人。忘れてはいないけど、藤沢さんに会えたことのほうが大きくて何となく抜けていた。


「うん。そうだよね。覚えることいっぱいあるし、自分を磨かなくちゃ」


「あはは、そうそう。ピカピカに磨けよ」


お兄ちゃんは、私の頭をぐしゃぐしゃにして、ダイニングテープルに行って、ご飯を食べ始めた。

私は自分の部屋で、研修用にもらった会社のパンフレットに目を通す。

どのページをめくっても、藤沢さんの顔が浮かび上がる。消す方法はないのかな?自然に消えるだろうか?
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