夢のような恋だった
智くんと一緒に家を出て、駅まで歩く間にサイちゃんに電話をいれる。
だけど、部活中だからか留守電に切り替わってしまった。
『紗優です。琉依ちゃんがいなくなったみたいなんだけど、サイちゃんなにか知りませんか?』
メッセージは入れたものの、気持ちが落ち着かない。
私があの時もっとちゃんと話を聞き出しておけたら、こんなことにならなかったんじゃないかなんて思ってしまう。
だけど同時に、琉依ちゃんのため息混じりの言葉も思い出す。
『紗優ねえちゃんって、何でも自分のせいだって思うんだね』
私がこんな風に落ち込むことを彼女が望んでいるわけじゃない。
考え方を変えなくちゃ。
今まで彼女と話したことがヒントになる。
彼女の人に言えない苦しさを、逃げ出した意味を、私が見つけ出してあげなきゃ。
私は気持ちを奮い立たせて前を向いた。
智くんは心配のためかさっきから言葉少なだ。
時計と電光掲示板を交互に見つめながら電車が入ってくるのを待っている。
この沿線沿いに彼女が通う高校もある。
もしかしたら歩いているのを見つけられるかもしれないと、私は周りを見回した。
残念ながら琉依ちゃんらしき姿はなく、私達はやがてやってきた電車に駆けこむように乗り込んだ。