夢のような恋だった

おばさんの目がスーッと細くなる。隣の智くんがすくみあがったのが分かった。
この家で一番権力がありそうなのは明らかにおばさんだ。


「……ふーん。だから紗優ちゃんも一緒ってこと? アンタ先に私に言わなきゃいけないことあるんじゃないの?」

「先に彼女の親に話したかっただけだ。母さんにも後でちゃんと言うつもりだった」

「あら、後回しにされるとは私も落ちぶれたもんね」

「お、おばさん」


段々険悪な雰囲気になる二人に、私でいいのかと思いつつ口を挟んだ。


「私たちのことは後でいくらでも説明も謝罪もします。……今は琉依ちゃんのこと考えましょうよ」

「あら。そうね。それは紗優ちゃんの言う通りね」


おばさんは我に返って説明をし始めた。


昨日の琉依ちゃんは至って普通だったという。

夜に少し壱瑳くんと言い合いはしていたみたいだけれど、それも日常茶飯事なので気にもせず眠ったのだそう。

今日は休みだからとなかなか起きてこない琉依ちゃんを寝かせたままにしていたものの、さすがに昼近くになって起こしに行くと、ベッドは既にもぬけの殻で【探さないで】という書き置きだけが残っていたのだという。


「壱瑳、昨日は琉依と何話したんだ?」


ちょうど電話が切れたタイミングで、智くんが問いかける。
壱瑳くんは気まずそうな顔をして、「別に」とだけ答えた。
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