夢のような恋だった

新見さんのチョコにいつまでも嫉妬しているのは心が狭いと思うけど、こだわってしまうんだから仕方ない。

去年琉依ちゃんに、来年は渡しなよって言われたけど、やっぱり無理。
この時期になるともやもやを思い出してしまった素直になれない。


「ごめんね。甘い匂い苦手でしょ」

「いや、いいよ。誰に渡すの?」

「お父さんとサイちゃんと、今年は卓お義父さんと壱瑳くんにも渡すつもり」

「……ふーん」


台所で水を飲んだ彼は、出来上がったチョコレートを型から取り出す私の脇から、一個チョコを奪っていった。


「もらってイイ?」

「だ……」


ダメって言う前に、智は口に入れてしまった。
モグモグと口を動かして、「甘い」とちょっと顔をしかめた後、笑った。


「……でもうまいよ」


きゅっと痛む胸は何のせい?

張っていた意地をあっさり崩されちゃって悔しいの?

それとも、やっぱり嬉しいの?


「……食べた」

「うん。食べれるよ。チョコ一個くらい」

「食べたぁ」


嫌だ、泣きそう。泣かないために堪えたら、怒った口調になってしまう。


「苦手って言ってたのに」


責めるような言い方をしてしまったら、智はたじろいだように私を見る。


「……だって、悔しいだろ。壱瑳が貰えるのに俺が貰えないとか」

「なにそれ。変」

「変じゃないよ。義理チョコに負けるのなんか嫌だろ」


それは、昔の私の気持ちを絶妙に言い当てていて。


「だから、来年からは俺にもちょうだい」


そう言って智が笑ったら、心にあった刺がポロリととれた気がした。




【Fin.】

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