ジャスミン
颯太郎は苛立ちながら歩き続けると、タクシーを停め、シートにもたれ掛かる。

『……。』

走り出す車内で不意に窓を見やると、流れゆくネオンの光の中に何とも無表情の自分の姿が映し出される。

三上 汐里に言われた言葉は颯太郎の心に再びカギを掛け始める。

自分にとって茉莉が特別な存在には変わらないが、果たして茉莉にとってもそうなのだろうか?

自分の素性を知ったら、他の奴らと同じようになってしまうんだろうか…。

よく考えれば出るはずの答えも、今の颯太郎には難しく只々ポケットの中の携帯を強く握りしめることしか出来なかったーー。
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