ジャスミン
何とも二人らしい手紙の最後に強張っていた顔が緩む。

読み終わると手紙を丁寧に畳み、ゆっくりと席に座った。そして顔をあげると、同じようにこちらを見つめていた颯太郎と目を合わせる。

『「……。」』



休日が終わっても茉莉の心は冷え切ったままで、寧ろ時間が経過していくに連れてそれは酷くなっていた。

(結局、颯太郎から連絡は来なかったな…。)

身も心も疲れ切った茉莉は最低限のメイクを施すものの、鏡に映る自分の覇気の無さに溜息が出る。

あの温もりを知ってしまった今となっては茉莉の日常に驚くほど、影響を与えているんだと痛感する。

『がんばってよ、私…。』

エレベーターで目的の階に到着すると、早番なのだろう、受付にいる美香が微笑みかける。

『…おはよう。』

心配かけないように精一杯の笑顔で挨拶をすると、美香がピクッと眉を動かす。茉莉は出来るだけ自然にその場を通り過ぎることでやり過ごす。
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