ジャスミン
『ごめん、可愛くてつい。抗議は後から受け付けるよ。』

その言葉に何も言い返せなくなったのか黙り込んだ茉莉に颯太郎は話しを始めた。


『俺の親父は金子グループ社長の金子雄一郎なんだ。
茉莉も知ってるように俺は双子だが、幸太郎はあの感じで昔から自由だから俺が親父の跡を継ぐんだなって自然に自覚していた。

俺はずっと親父の背中を見てきたから、背負ってるものの大きさとか周囲からの視線とか…息子だっていうぬるま湯に浸かってたら到底俺には無理だと自覚してからは沢山のものを諦めてきたし、自分で考えれる努力は必死でしてきたんだ。

昔は若気の至りというか、周りに人が集まって来ることに天狗になっていた時期もあってさ、だけどそいつらは結局のところ「俺=金子の息子」だったんだ。そのことに気付かされた時はまさに絶望っていう感じで誰も俺を見てくれないんだってかなり自暴自棄になったよ。

だから前にも言ったけど、必要以上人と関わらないようにしたし、特に女とは気をつけて近寄らないようにしてた。

でも、茉莉に出会って俺はどうしてもおまえだけは諦めたくないって思ったんだ。茉莉が居てくれたら俺はどれだけでも頑張れる。
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