ジャスミン
マグカップに口を付けると、ほのかな甘さが身体に染み渡っていく。

無言のままカフェオレを味わう茉莉を急かすわけでもなく美香は見守るように見つめる。


『いきなりごめんね。今回ばかりは流石にどうして良いか分からなくなっちゃって…。』

『茉莉は謝ることなんてしてないでしょ⁉︎前にも言ったじゃない、私は頼ってもらえて嬉しいんだから。…何があったか聞いても良い?』

話しやすいように気遣ってくれる美香に感謝しながらも茉莉は部長夫婦の見送りから自分の身に起きた出来事を話し始めた。



『…そう。佐伯部長良かったね、褒められる事ではないけど、三人にとっては必要な通過点だったのかもね。』

『うん。あの二人には本当に感謝してるよ。』

第三者という客観的な立場の美香に否定されなかったことは茉莉の心を随分軽くしてくれた。

『それにしても…金子母は手強そうだね。聞いてるだけで身震いしちゃったよ…何か全て見透かしてるっていうか誤魔化しが効かない感じ。』

そう言うと美香は顔をしかめる。
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