ジャスミン
『それって…。』

『俺の人生に茉莉を巻き込む訳に行かないんだよ。』

大樹は颯太郎が言い終わると同時に盛大な溜息をもらすと胡坐をかいた状態のまま右手で前髪をグシャグシャッとかき乱す。

『…おまえは本当に頭でっかちだな。頭で色々考える前に譲れない想いないのか⁉︎』

『あるに決まってるだろっ!だが俺の気持ち以上にあいつの…あいつの大事にしてきたものを俺が奪う訳にいかないんだよ…。』

颯太郎は葛藤してきた複雑な感情を目の前の親友にぶつける。その様子に大樹は目を伏せた。

『そうだよな、おまえが一番辛いはずなのに…悪かった。でも他に方法は本当にないのか?』

想い合っている二人が離れなければいけない理不尽な状況に大樹はやるせない気持ちになる。

『あるんだったら俺が知りたいよ…。』

何も策が思い浮かばない状況に情けなくなりながらも新しい缶を開けると一口飲む。

『まぁ、取り敢えず今日は飲むかっ!』

『…そうだな!』

妙に明るい大樹に苦笑いを浮かべながらも、それくらいの空元気でもしていないと潰されそうな颯太郎は今日ばかりは大樹の配慮に感謝するのだったーー。
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