ジャスミン

〜颯太郎〜

〜颯太郎〜

クリスマスイヴから月日は流れて梅雨入りを知らせるニュースを耳にする。

あの日からがむしゃらに目の前のやるべき事に集中してきた。

母に言い渡された通り未練はあったが、信頼できる部下たちに後の事を任せ、企画課を去った。

その代わりの条件として、以前から目に余る横暴な振る舞いを繰り返していた専務を子会社へと事実上の左遷を実施してもらった。

その事で頼る者がいなくなった三上汐里は退職願いをデスクの上に残し消えていった。噂だと、婚活パーティーで知り合ったどこかの坊っちゃんと婚約したらしい。


『あっ!颯太郎じゃ〜ん!』

取引先から戻って来たところ、背後から聞き慣れた声に振り返る。

『おまえも営業から戻って来たのか?』

大樹は疲れたアピールをしながら隣りに並び歩いていく。

『本当、最近上層部に入った奴が仕事人間だからこっちまでとばっちり受けてるよ。』

『…悪かったな。』

全く悪びれる様子もなく答えるとエレベーターのボタンを押し、到着を待つ。
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