ジャスミン
〜茉莉〜

茉莉は目的地もなく、ただ歩き続けたー頬に流れる涙もそのままに。

(自業自得ってことだよね。)

行為の最中の健司の苦しげな表情を思い出すと、どうしても彼を責める気にはなれなかった。

自分がしてきた事の代償の大きさに情けなさと後悔とが混ざりあい、ますます涙が止まりそうにない…。


どれくらい歩いたのだろうか。周りの景色は見慣れたものではなくなっている。

夜のネオンも目立つ時間帯になり、店へと呼び込むような声があちらこちらから聞こえてくる。

すると突然、背後から腕を捕まえられる。

『い、いやぁっ!』

びっくりした余りに捕まれた腕を振りきり走り出した。


無我夢中で走った。


景色が歪んで見えていく。


私、神様に見放されたのかな…


『おいっ!ちょっと待てって!!』

今度こそしっかりと腕を捕まえられる。勢いで身体がその声の方を向いた。

…今、一番会いたくて一番会いたくない人。
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