ワケアリ男子の秘密

朱雀の憂鬱



──ザッザッザッ

ん?

─ザッザッザッザッザッ

んん?


なんか近づいてきてるな。

誰だ?



俺に近づいてくるたぁ、
よっぽどの物好きか


....それとも俺を笑いにきたか。



もしくは、また、女か。



面倒だな。


とりあえず寝たふり。



とその時、顔に被せてある本が取られた。



は?


こいつ何やってんだよ。



本がとられてだいぶ時間が経った。
.....しかし、一向に何も起こらない。



なんだ?




しびれを切らした俺は


本を奪ったその手を
捕まえた。


それから目を開けると


俺の顔を覗き込む女?いや、
制服からして男?


俺は起き上がってそいつの顔を見つめた。


心なしか....赤くなってる気がするのは

夕陽のせいか。



....かわいい顔したヤツだな。

くりん。と毛先が遊んでるのは
寝癖とも無造作ヘアーともとれる。
しかし女みたいな面してんな。

白い肌。
小さな、ふっくらとした唇。
悩ましげな瞳。
眉をハの字に歪めて
俺を上目遣いに見上げる表情が
なんともいじらしい。


「あのー...手を離してもらっても....」

あ。忘れてた。


俺は手を離した。


で、そのあと学年聞いたんだっけなぁ


そしたらバカ丁寧に名前まで。



面白いヤツ。


とりあえず、俺も自己紹介して
帰ったんだけど。



一年生か。
俺に近づくとはねぇ。


何も知らないんだろうな。


ま、そのうちアイツの耳に入るのも時間の問題か。



俺が男にしか気がないこと。



知ったらあいつも逃げて行くんだろうな。



仕方ないさ。

俺は諦めと共に、俺を笑うモラルのないゲスどもを軽蔑する。



なにも分からないくせに。



「アイツ男にしか気がないんだってよ」



知ったような口利かれちゃ
たまったもんじゃないぜ。


たったそれだけの短い言葉で俺を
表現してくれるな。




そんな単純な言葉で
言い表せるほど
俺は簡単じゃない。


そしてその単純な言葉で
何度俺が傷付いたことか


低俗な奴らには分からないだろう。



俺は寮に戻ってシャワーを浴びた。


今日、会った子もやっぱり
俺から逃げて行くんだろうな。


「は、はは。」

シャワー室に俺の乾いた声が
虚しく響いた。
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