ある派遣社員の男
男・派遣社員・プロローグ
昔、派遣社員をしていた男が居た。

彼の仕事は、パソコンのサーバーの管理。 デカイ機械が正常に動いてるのを見ているだけの簡単な仕事だ。
なんでも、 簡単すぎてヘドが出るくらいらしく。
夜勤なのも手伝って、大変退屈していたそうだ。 ‌‌
夜勤でありながら、手当ては安い。 彼は、悪態をつきながらも、誰もいないオフ ィスを徘徊して回った。‌‌

そして、あるものを発見した。‌‌

それは、コーヒーポットだった。
時間が経って酸化した無駄に熱いだけの産物 。‌‌
ブラックは飲まないタチだが、彼はふとある 事を思い付いた。‌‌

尿を入れたらどうだろうかと。‌‌

コーヒーは苦いし、匂いだって強い。 ましてこれに尿が入っているとは、一体誰が 思うだろうか?と。
この会社の全員が、派遣社員である俺の尿を飲む。
会社名でしか呼ばれた事のない俺の尿を飲む なんて、なんて滑稽な話じゃないか。 ‌‌

男は、紙コップを掴むとトイレに向かい。 ベルトを弛めた。
その仕事ぶりは早く。‌‌

彼の産み出した負の産物を、コーヒーポット に入れるまで、さほど時間はかからなかった と言う・・。‌‌

男は何度も振り返りながら、紙コップ分の負 の産物を入れたコーヒーポットを元に戻した 。 コーヒーポットは、何事も無かったかのよう に『保温中』の赤いランプを点灯させた。‌‌

それから、彼に予期せぬ事態が起こった。 なんと彼、この期に及んで罪悪感を感じ始めたのである。
人様に尿を飲ませておきながら罪悪感にかられるとは、常人なら理解しかねる話ではあるが。‌‌

かれは次の夜勤まで、深い罪悪感と後悔で悶 絶したという。‌‌
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