お見合いの達人

5.いつか

『只今、豪雨、暴風のため滑走路を安全に走行出来ないため、このまま羽田に戻ります。

なお………』

は?


何言ってんの?冗談じゃないわよ!

ここに来るまでにどれだけ悩んで、どれだけ覚悟に時間ががかかったと思ってるのよ!

思わず立ち上がって倒してあったテーブルがバキッっと音を立てた。

「お客様おちついて座席にお着きください」

CAに咎められ、しぶしぶと席に着いた。

どんなに足搔こうがこの便は羽田に戻ってしまうのだ。

回りの視線を感じつつ、頭を抱えるしかない自分が情けない。

今までのことやここまでのことを省みると、

もう藤吾に会うのは諦めろと言うことなのかもしれない。

何もかも投げ打って探すほど藤吾のことを思えてはいなかった。

仕事の方をつけ、誰に咎められることなく有給をとって、

藤吾がいると言う場所へと向かった。


会えても会えなくても彼を探すことで、

自分の中でキチンとしたケジメみたいなものを付けておきたいだけなんじゃない?

だってそうでしょ?

藤吾に会ってどうしたいの私。


「好き」って伝えるの?

……

違う。

「好きになれなくてごめん」っていうの?


……

そうじゃない。


藤吾に会って、言いたいこと


それは……




もっと一緒にいたかった、

違う形で会いたかった、


素直じゃなかった私

ごめんね。

大好きだったよ


って……





ちゃんと顔見て言いたかった

それは私のエゴなのかも。


神様は必要ないって言ってるってことなのかも。



ここまで来て、会えないのはもう……そういうことでいいかな、

そんな気持ちが固まった。











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