お見合いの達人



「遅かったな」


「な、今何時だと思ってるのよ?」


そいつは、はあっとため息をつくと、


「そのセリフそのままお返しするよ。


あんた女って自覚あんの?」


「あるわよ、失礼ねぇ!」


「ん。まあいいや、喧嘩しに来た訳じゃねえし。」


するりと腕を絡ませると、手をつないだ。


「ちょっとっ!」


振り払おうとした手をぎゅっと掴んで、

カラカラと笑った。


「予想通りの反応。

そんなに身構えるなって。」


「あんたねーっ!」


「藤吾」


「は?」


「俺の名前、まだちゃんと呼んでないだろ?あんたとか、弟とかさ」


と、いうか、

名前忘れてたんだよね。


兄と弟ってメモってたから

「だって、呼ぶ必要なかったし」


「ふーんならおぼえてなかったわけじゃなかったんだ?」


「う」


「図星だ。

まあいいや。


今覚えて?

木原藤吾、今からあなたの恋人

よろしく!」






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