お見合いの達人
カツカツカツカツ……

商店街を抜けて、駅の階段を上がり始めて、


はたと我に返った。


やだ、これ私の靴じゃない。



どこに売ってるんだと思うほど目に眩しい真っ赤なエナメルのピンヒール。

このヒールに踏まれて、

喜びに震える彼の顔を想像して、

ゲンナリした。


やっと抜け出したあの場所に戻って、

靴を取り戻す?



イヤイヤ無理でしょ。


今日は普通にデートできるって結構盛り上がってたのにな。


「まあ、いい人なんだし、

ちょっと……変わった趣味があったって、

人それぞれ個性があるしね?」


ハハハ……

はあぁぁ……

少しじゃないだろ?変態じゃん!


さっきの体中に走った嫌悪感を思い出して。

動けなくなる。
















< 93 / 198 >

この作品をシェア

pagetop