お見合いの達人
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「無理無理無理無理無理だから……っ

もうっ


婚活始めてからろくなことがないんだから」



「ははっ奈留ちゃん、

 あれからいろいろあったんだなあ」


1人でいるのもむなしい私は、いつもの大将の店に転がりこんで、

愚痴をこぼす。


「だからさあ奈留ちゃん、婚活なんかもうやめて、トシ坊と所帯もっちまえ」

「はあ?なんであいつ~?」

「今までの話聞いてりゃ、

トシ坊の野球バカなんざましなんじゃないか?

子ども好きだし、なんつっても男気がある。

それに……」


「それに?」
 
「奈留ちゃんにぞっこ……



いやいや、ここからは本人が言わなくちゃな」


「知ってるから、

この間ウチの店にきて、

付き合おうって言ってきたし」


「おお!そうかやるなトシ坊!」


「どこが?」

もう結婚とか考えるのやめて、お一人様人生にスイッチしたほうがいいのかも

正直疲れたわ。

「まあ、何はともあれ、いわゆるモテ期なんじゃないかしら、

 奈留ちゃん、どうせなら今を楽しんじゃったら?」

「え?」

順子さんがにっこり笑ってそして耳打ち、

『モテキ楽しんじゃいなさいよ。

それで

結婚までできたらラッキーぐらいに思えばいいじゃない?

結婚したら色んな人とお付き合いなんてできないのよ?

結婚は年貢の納め時っていうでしょ?

経験者は語る。なーんてねっ』


ふふっと笑って舌出した。

え、一寸順子さんそれって、


それって……本音?

あわてて大将を見ると、

カシャカシャと刺身のつまを切っていた。


順子さんはいつもと変わらない様子で笑顔で洗い物をしながら鼻歌を歌い始めた。


そんな二人を見ながら一人ドキドキしてる私はまだまだ未熟者なのだろうか。


















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