佐藤さんは甘くないっ!

「だーいじょうぶよ、今は柴の隣にいるんだから」

「……わたし何も言ってないし」

「どうせわたしなんかがあの殿上人と~とか思ってたくせに」


…もはや図星すぎて否定する気にもなれなかった。

あはは、と乾いた笑いを零して残りのオムライスを平らげる。

そんなわたしの様子を見て少し不思議そうにしていた律香は、突然納得したように手をぽんと打った。


「なーんか機嫌良いと思ったら、もしかして柴、今日佐藤さんとデート?」

「っ、ごほごほっ!……り、律香やっぱりエスパーでしょ!」


なんの脈絡もなく爆弾が落とされたので、衝撃のあまりコップを倒す所だった。

どうしてバレている?

どうして知っている?

わたしは動揺した心を押えながら、律香を手招き耳元で囁いた。


「…………な、なんで、わかったの。てか声でかいよ律香」

「あんたに言われたくないし。だっていつもなら、からかうともっと噛み付くくせにさー」


今日は借りてきた猫ちゃんみたいだねーなんて言いながら律香がわたしの頭をぐしゃぐしゃにした。

ムカついたのでその手を引っ掻く真似をしたら馬鹿にされた、…全く不条理にもほどがある。


「わかりやすくて可愛いなぁ、柴は」

「……うるさいなあもう」


恥ずかしくて赤くなった頬がじんわりと熱をもつ。

湯気が立ち上る紅茶を咽喉に流し込めば、その熱がより膨れ上がるような気がした。
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