佐藤さんは甘くないっ!

それは衝撃的すぎる告白だった。

え……あの佐藤さんが、ひとりでこのお店に?

こんなファンシーでキュートで、いかにも女の子向けのお店に?

ちょっと情報処理が追い付かない。

週末といえばわたしは律香とヤケ酒をしていて、佐藤さんは本当にわたしのこと好きなのかな、とか思ってたけど……わたしのためにお店リサーチしてくれてたんだ…。

そんなことするようなひとに見えない、のに。

こんな風に誰かに尽くすとか、そんなの。

…びっくりしすぎて固まっていると、店長さんは微笑んだ。


「彼女さん愛されてるなーって、羨ましくなっちゃいました」


うっ、と胸に詰まるような思いがした。

素敵だ、わかってる。

優しい、わかってる。

わたしにだけとびきり甘い、のも、わかってる。

昨日あれだけ佐藤さんの真摯な想いをぶつけられたら誰だってわかる。

……もう色々と理想を上回りすぎて、どんな顔したら良いのかわからない。

お財布の中には昨日もらったカードキーが入っている。

あれだけでも十分に嬉しかったのに。

こんな連続攻撃されても、耐えられないよ。

なんでわたし泣きそうなんだろう。

嬉し泣きってこういうこと?


「……笑顔でありがとうって言えば、きっと伝わりますよ」


心を見透かしたように店長さんはそう言って、バックヤードに戻って行った。

取り残されたわたしはひとり、考えていた。

そういえばわたし、佐藤さんにありがとうって言ってないかもしれない。

カードキーもすごく嬉しかった。

たぶんその気持ちは伝わってるけど、……ちゃんと言葉にはしてなかった。

与えられ続けることが恋愛関係じゃない。

まだ6日目だし、お試しだけど、佐藤さんは本気でわたしを愛してくれる。

もうそこは疑いようがない。認めるしかない。

だったらわたしも、……わたしも。
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