Caught by …

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　賑やかな廊下を一人ぼんやり歩く。

　頭の中はレイの事だけでパンク寸前。

　不機嫌な顔も、怒った顔も、イタズラな顔も、滅多に出さない眩しい笑顔も。

　彼が茶化すように呼んだ“ハニー”の声も、全て私をときめかせて止まない。

　仕事が忙しいのに私の所に来てくれて、夜も…。

　こんなに日が暮れることを待ち焦がれるなんて、と浮かれてしまっていた私は、誰かとすれ違い様に肩をぶつけてしまった。

「あ、ごめんなさい」

「こっちも…て、君もしかしてトムの彼女じゃ？」

　話しかけられて顔を上げても、知らない男の子。

「え…っと？」

「やっぱりそうか！彼から話しは聞いてたけど、予想以上に可愛いね。あんな文学オタクのどこが良いのやら」

　肩をすくめさせる、そばかす顔の男の子。きっと同学年だろうな。

「おーい、デイヴ！…ん？こちらのお嬢さんは？」

「あ、先輩。この子、トムの彼女っすよ。ずるいよなぁ、トムの野郎め」

　デイヴという男の子のもとに四、五人が集まってきて、あっという間に囲まれていた。みんな、スポーツをやっていそうな筋肉質の体格をしていて、私は恐怖にも似た気持ちに冷や汗を流す。

　トムを知っている人と知らない人とでごちゃごちゃと話し合い出すと、私はどうしたものかと困り果てる。

　早くここから立ち去りたいけど、トムの友達もいるみたいだから無碍には扱えない。怖いけど、ここは我慢するしかない。

「あれ？セシーリア？」