Caught by …
“セシーリア、あなたにはスカートやワンピース、可愛いお洋服が似合うのよ”

 私が遊びやすいズボンを履きたいと言ったら、母親は反抗を許さない笑顔で言った。

“でも、お姉ちゃんは…”

“お姉ちゃんはお姉ちゃん、あなたはあなた。そんなに服が欲しいならお母さんが買ってきてあげますからね”

 姉が許されても、私は許されない。

 私に宛がわれるのは鬱陶しいほどのフリルだったり、リボン、レース。

 姉は自由だった。私は自由ではなかった。

 姉は死んだ。私は生きている。

 母親にとって思い通りに生きる私が、亡くなった姉の悲しみを紛らわせているのだ。

 だから、私はトムの側にいなければいけない。レイをこれ以上好きになんかなってはいけない。

 またそうやって強がっても、あなたは結局彼の毒に抗えないわ…心の中で皮肉な声が聞こえた。

 でも、とっくに私の器量を越えてるのよ。レイのキスを思い出す度に、私は母親の完璧な教育に吐き気や悪寒すら感じている。トムに対しての罪悪感は心臓を圧迫するように苦しい。

「セシーリア、どうしたの?」

 講義室から出て並んで歩いていたトムが私の肩に手を置いて、首を傾げた。

 いつか正直に…なんて、覚悟の決まらない言葉は卑怯だ。そんなのは私の勝手なエゴでしかない、騙している苦しさから逃れたいだけ、分かっていて私は一呼吸してから口を開けた。

「話したい事があるの。私、本当は…」
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