Caught by …
危険な彼


 三人で遊んだ帰り道。ショッピング街から歩いてそう離れていない寮までの道は、人通りがほとんどない。

 空はすっかり暗く、外灯の明かりが地面を照らす。

 ベッテとアンネはクラブに行くというので、私だけ先に帰ってきた。…正直、あんな酔っぱらいや見境なく乱れる男女の集まりに望んで行こうだなんて、私には考えられない。

 前にアンネに連れられて行ったことがあるが、その時、もう二度と行かないと強く思った。誰だか知らない男に腰を押し付けられるわ、渡された飲み物を何気なしに飲むとウォッカだったり…。とにかく、散々だった。

 彼女に恨みつらみをぶつけるつもりはない。あの時、誘いを受けた自分が恨めしくて仕方ないのだ。

 私が生まれ育った町は片田舎で、広い庭と母親が家族の次に大事にしていた温室が唯一の遊び場だった。

 そんな田舎者の私には、場違いでしかなかった。立っているだけで目眩がした。


 ──私とは違う世界。


 そう考えて、私の足が自然と止まった。

 それじゃあ、私の世界とは何なのだろう。

 そもそも、私が知っている世界なんて、ちっぽけなものでしかない。知らないことばかりだ。だけど、その知らない世界に飛び込める度胸なんてない。

 こんな風に、私は、私の足を動かすことができない。

 何かに、縛られているように……。


“セシーリア、あなたも自分の道は自分で決めなきゃ”

 記憶に残るあの人の言葉。

“あなたはお母さんの人形じゃないんだから”

 あの人は笑っていた。

“セシーリア、私はあなたのことを一番に…”



 だけど、あの人は、私を見捨てたの。

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