黄昏に香る音色 2
「相談?」

直樹は、顔を真っ赤にして頷くと、

「速水さんとの…ことなんだけど…」

「速水…」

和也の脳裏に、昨日の光太郎の言葉が蘇った。

(香里奈をものにしろ!)

「クッ」

和也は、少し顔をしかめた。

「どうした?」

直樹は、和也の顔を覗き込んだ。

「何でもない」

和也は顔をそらしながら、直樹にきいた。

「それで…相談の内容は」

直樹は訝しげに、和也を見つめながらも、

相談内容を思い出し、また赤くなる。

「は、速水さんと…デートしたいんだけど…どこかオススメないかな…」

「デート…か…」

「和也だったら…どこかいいところを、知ってるかと思って」

和也は、もたれていた手すりから離れ、

歩き出す。

「すまん…直樹。思い浮かばない」

「和也…」

「もう授業…始まるぜ」

教室に向かう和也の後ろ姿を、直樹はしばらく見送った。

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