黄昏に香る音色 2
画面の向こうから…
歩いてくる。

できるか、できないかは、
歩き方で分かる。

と…有名な音楽家が、言っていたけど…。

香里奈には、その意味が理解できた。

志乃の歩くリズムを、感じていると。

テレビからは、聞こえないけど…見ただけで分かる。

まだ十代でありながら、気品があった。

司会者と話す時は、気さくで、冗談も言う。

けど、

ステージに上がり、曲が始まると…すべてが変わる。

激しいビートと、

周りのダンサー…に囲まれ、

イントロが終わった瞬間、

志乃の肢体が、ナイフのように、空気を切り裂いた。

躍動する肉体が、

注目を彼女に、集中させる。

そして、

歌う。

それは、ダンサーの歌では、なかった。

天は彼女に、

パーカッションのように、弾ける肉体と、

すべてを、駆り立てる歌声を与えていた。

もう彼女しか見れない…。


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