黄昏に香る音色 2
「百合子さんが何故、カリフォルニアにいたのはわからない。しかし、啓介さんと、いたのは事実。そして、二人の間に子供ができたことも事実」

阿部たちは驚き、言葉がでない。

「当時、百合子さんの両親は亡くなっており…姉妹は、親戚の家に世話になっていた」
「親戚は、高齢であり…突然百合子が亡くなり…赤ん坊までいる。百合子は働いていたから、収入があった。それがなくなり…まだ中学生だった志乃の面倒を見てるのに、赤ん坊までは、見れないと言った」

里美は目を瞑り、

「だから、あんたは…」

一度言葉を切り、

「和恵を養女に迎え、育てることにしたのよ。子供の為、周りにうそをついて…」

「あの子には罪がないから…」

明日香は呟いた。

阿部は、そんな明日香にかつての姉と姿をダブらせっていた。

「事故で亡くなったと周りに言ったところで…妹である志乃は、真実を知っていた」

明日香は、里美の言葉の後を続けた。

「だから…彼女は独立する為、バンドに入り…早い時期にデビューしたの…生きていく為に…」

里美は明日香を見、

「あんたがそうさせたんでしょ!」

里美が叫んだ。

「志乃の為に、LikeLoveYouを脱退して…志乃をバンドに入れるようにもっていった…」

里美は泣いていた。

「どこまで、お人好しなのよ」
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