黄昏に香る音色 2
改札を降りると、

目の前に里緒菜がいた。

「こんばんは…」

里緒菜の少しぎこちない挨拶に、

「どうしたの?こんな時間に…」

少し訝しげに、直樹は里緒菜を見た。


「謝らなくちゃ…ならないことがあるから…」

二人は歩きだした。

あまり栄えた駅じゃないから、すぐに…真っ暗な人気のない場所に出る。

川添の土手…。

駅の反対方向にいくと、高校がある。

明日香や里美が、通った高校だ。

里緒菜の家は、ちょうど反対側にあった。


風がきつい。

里緒菜の髪を、舞い上げる。

直樹は川面を見つめながら、里緒菜の言葉を待った。

里緒菜も、川面を見つめた。

周りの住宅の明かりをうけて、反射していた。

里緒菜は…

ゆっくりと口を開いた。

「この前…」

直樹は、里緒菜を見た。

整ったきれいな横顔は、まだ川面を見つめている。


「香里奈とナオくんのこと…応援するっていたけど…」

おもむろに、里緒菜は口を開いた。

月が川面に映り、揺れていた。

「だめみたい…。応援してなかった…」

無言の直樹。

「ごめんなさい…」

里緒菜は、拳を握りしめ、

「応援なんて…応援なんて…できなかった…」




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