黄昏に香る音色 2

心が雨の日

いつのように、ダブルケイは、営業をしていた。

満席の店の熱気を、下から感じながら…

2階で、香里奈は口笛を吹き、ドラマーである里美の叩きだすリズムに、身を任せていた。


唐突に、玄関のチャイムが鳴った。

普段は、あまり使わない裏口。

一応そこが、家としては…玄関になるけど、駅から遠くなるから、店の扉から、出入りしていた。

どうしても、営業中に、外に出なければならない時だけ、そこを使った。

香里奈は、階段を降り、店のステージとは、逆の方向…右に曲がった。

すぐに玄関がある。

用心深く、

「誰ですか?」

声をかける。

少し間をあけて…

返事があった。

「香里奈ちゃん…あたし…」

声ですぐに、わかった。

香里奈は、急いでドアを開けた。

「志乃ちゃん!」

玄関の前に、志乃が立っていた。

いつのまにか…

外は、雨が降っていた。

傘もささずに…

雨に打たれながら、

志乃は立っていた。
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