黄昏に香る音色 2
二人は、音のした方を見た。

人が倒れていた。

香里奈には、それが誰か…すぐにわかった。

「志乃ちゃん!」

思わず叫んで、走り寄った香里奈が、抱き起こすと、傷だらけの志乃の顔があった。顔色も悪い。

直樹は店に入り、急いで里美を呼びに行った。

外にでた里美は、志乃の姿に驚いた。

「志乃ちゃん!」

志乃は何とか、目を開け、

「里美先生…」

そして、

香里奈を認め、

「香里奈ちゃん…」

ゆっくりと微笑んだ。

「志乃ちゃん…どうしたの?」

香里奈の声に、反応しながら、志乃は手を伸ばし、

香里奈の頬に触れた。

「おかしなものよね…日本に帰って…逃げたけど…ここしか、いくところが…思い浮かばなかった…」

志乃は店を見上げ、

「もう来ることはないと…思っていたのに…グハッ!」

志乃は、血を吐いた。

里美は急いで、救急車を呼んだ。

「志乃ちゃん!」

志乃は、香里奈に笑いかけ、香里奈の手を握った。

「あたし…歌では…誰にも負けたくなかった…世界一になりたかった…でも…」

話すたびに、血がでてくる。

「なれるはずがなかった…」
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