黄昏に香る音色 2
次の日、

テレビは大々的に伝えた。

志乃の引退を。

驚く程、早い動きだった。

テレビの中で、大輔と他のメンバーの会見が、始まった。
大輔が話し出す。

「突然の不幸な病気により、志乃は、歌えなくなりました」

数多くの記者が、大輔たちの前に座る。

「しかし、悲しむことはない」

大輔は、テレビカメラを真っ直ぐ見つめ、

「あなた方は…この世に、どれ程の歌手が、生まれているかご存知ですか?毎週必ず、どれ程のヒット曲が生まれているのか!毎週、絶対にナンバー1の曲は、できるのです」

大輔は微笑み、

「しかし…皆さんは覚えていますか?1ヶ月前のナンバー1を!一年前のヒット曲を!そして、それを歌っている歌手を!」

大輔の目が、妖しく光る。

「我々がほしいのは、今だけのナンバー1歌手ではなく、必ず決まるナンバー1ではなく…永遠に残る歌手。流行をこえた存在!」

大輔は立ち上がり、

「残念ながら…志乃は、なれなかった」


大輔は両手を広げ、

「志乃だけじゃない!今いる、ほとんどの歌手がなれはしない!」




テレビを見ていた里美は、違和感を感じていた。

「大輔…」

画面に映る大輔の表情…目つきは、


里美の知る大輔では、なかった。



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