黄昏に香る音色 2
熱いもの
「あら。遅かったわね」

ステージの横まで来た香里奈を、見つけたティアは、嫌みぽく微笑んだ。

ティアの後ろを、バンドのメンバーが通る。

ステージへと向かうのだ。

その中に、KKがいた。

虚ろな瞳の癖に、なぜかギラギラしていた。

香里奈は、KKの横顔を見送った。

「あなたは、途中で参加したらいい。あなたの好きな曲を、歌ったらいいわ。彼らは、何でも合わしてくれるから」

会場は、拍手とブーイングが激しかった。

ティアは、笑いが止まらない。

「こういうバカな観客の方が、壊れやすい」

KKは、観客の反応はお構いなしに、

サックスをくわえた。

音が溢れ出た瞬間、

会場が揺れた。

KKのサックスが、次々にフレーズを叩き込む。

ブーイングしていた観客の何人かが、いきなり奇声を上げると、

拍手をしていた賛成派に、殴りかかった。

少し混乱するオーディエンス。

周りの興奮状態を、目の当たりにし、

唖然とする香里奈。

「どうして…」

ティアは、鼻を鳴らすと、

香里奈を見、

「さすが娘ね…。この音を聴いても、何ともないなんて」

ティアや、他のコンサートスタッフは、特殊な耳栓をしていた。

でないと、狂いそうだ。

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