黄昏に香る音色 2
「彼女?」

香里奈は、首を捻る。

「チケットの一番下を、見てごらん」

香里奈は、チケットの下の方に書いてある主催者の名前を見た。

「如月………如月って!?」

香里奈は、はっとして、

直樹を見た。

直樹は頷き、

「如月さんの実家だ」

全国チェーンの飲食店を、経営する如月チェーン。

里緒菜の実家の会社だ。


「如月さんから、香里奈さんに渡してくれと…」

「里緒菜が…」

「あの子は…どうせ、とめようが…チケットがなかろうが、行く子だからと」

直樹は、香里奈に少し近づき、

「時間がないんだろ」

香里奈はチケットを握りしめ、深く頷いた。

「行こうか」

駅の中に入ろうとする直樹を、香里奈は止めた。

「ナオくん…ごめん。あたし、一人で行きたいんだ」

「え?」

直樹は、香里奈の顔を見た。

その真剣で、強い決意を持った表情に、

直樹は、納得した。

「わかった…。いってらっしゃい」

直樹は足を止め、香里奈に道を開けた。

「ごめん」

改札の中に、消えていく香里奈を、見送る直樹。


改札を通った香里奈の足が、止まる。









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