黄昏に香る音色 2
祭りの後
「KK!」

ステージを降りた啓介に、ティアが駆け寄る。

「どういうことですか?なぜ、演奏をやめたのですか!」

凄い形相で、啓介に詰め寄るティアに、

「もう終わったんだよ」

啓介はティアを見、

「もう…すべてが終わった」

「な、なに言ってるんです!まだ終わっていません。演奏を続けて下さい」

啓介は、首を横に振り、

「もう…薬の効き目もなくなった…」

啓介は、香里奈たちの音がきこえる方を見た。

「ワクチンができたしね…」




「はははははは…」

ティアは笑い出す。

「ワクチン!?」

頭を押さえ、

大声で笑う。

「こんな音が!こんな生温い音が!ワクチン!?」

啓介は、ただティアの様子を見つめる。

「そうだとしても、そのワクチンというものは、一人だけ!この国以外に、いないわ」

啓介は、視線をティアから外した。

「そのワクチンによって…KKという病原体は、死滅した」


啓介は、ゆっくりと出口に向かって、歩き出す。

「もう存在しない」



「KK!!!」

ティアは絶叫した。

「死滅した?…だったら」

ティアは、啓介に向かって、走った。

「もう…いらないわ」
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