黄昏に香る音色 2
「いこう!志乃ちゃん」

「え!?」

驚く志乃を、

香里奈は無理やり、引っ張っていく。

「あたし…もう歌えない…」

抵抗する志乃に、香里奈は言った。

「大丈夫!志乃ちゃんなら、歌える」

香里奈は、真剣な眼差しで志乃を見、

つかむ手に力を込めた。

「歌えなくても、歌える!志乃ちゃんなら」

「香里奈…」



「いけよ」

その様子を見ていたサミーは、志乃に向かって言った。

「サミー…」

志乃は、英語が話せる。

「今行かなきゃ、一生いけないぞ」

「でも…」

「お前は、シンガーだろ?」

サミーは、志乃の肩を叩いた。

香里奈は、何を話してるのかわからないが、

理解はできていた。

「その辺の…歌が上手いだけのやつと、真のシンガーの違いはな…ただ一つだ」

サミーは、志乃の目を見つめ、

「待ってる奴…ファンがいるかだ。今、歌えなくても、待ってるファンがいる奴だ」

サミーは、にっと笑った。

「でも…コンサートはあたしの…」

「行きゃわかるさ。わからんかったら、やめちまえ」

サミーは、志乃の背中を押した。

「志乃ちゃん!」

香里奈は、志乃の手を引いて、再びステージに戻った。


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