黄昏に香る音色 2
ステージを降りた志乃の前に、

大輔たち…バンドメンバーがいた。

「みんな…」

志乃は、少し驚いていた。

「どうしてここに…」

大輔は、バツが悪いそうに、頭をかき、

「お、俺たち…職にあぶれたんだけど…」

大輔は、恥ずかしそうに、

「誰か…雇ってくれないかな…いいボーカリストに」

ちらっと、志乃を見た。

志乃は苦笑し、

「歌えない歌手なら…一人知ってるけど?」

志乃は腕を組み、

そして、

また苦笑する。

「まあ…何とかなるだろ」

大輔は肩をすくめ、

「俺の作曲能力があれば」

「な!」

志乃は絶句し、

「もう雇ってあげない!」

フンと、そっぽを向いた。

大輔は慌てて、

「冗談だよ。冗談!」

「こんなときに言う冗談じゃないわ」

「ごめん!許してくれ!」

その様子を見ながら、

他のメンバーは思った。

何とかやっていける。

いや、

昔以上のバンドになると、

確信した。
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