黄昏に香る音色 2
無理すること
部室に戻る前に、里緒菜は、校舎への入り口近くで、

立ち止まり、胸をぎゅっとつかんだ。

強がってみたけど…

内心は、戸惑い…

落ち着かない。

鼓動が激しい。

もう割り切って…

気持ちを切り替えたはず。

もう…大丈夫のはず。

壁にもたれ、激しく息をしていると、

「如月さん!」

入り口から、直樹が出てきた。

少し慌てて、心配そうに、

「どうしたの?大丈夫だった」

直樹の慌てぶりに、里緒菜は苦笑した。

「何かあったの…」

直樹の言葉に、里緒菜は、ボソッと呟いた。

「あなたって、人は…」

里緒菜は顔を上げ、直樹を見た。

「如月さん?」

里緒菜は、にこっと笑うと、直樹の横をすり抜けた。

「飯田くんには…関係ない…」

「な…」

里緒菜の冷たい口調に、直樹は凍り付いた。

里緒菜は、校舎を歩きながら、少し滲んだ涙を拭わず、歩き続けた。

あの人は変わらない…。

だから、

あたしが変わらなくちゃいけない…。


あたしが変わらないと。
< 344 / 539 >

この作品をシェア

pagetop