黄昏に香る音色 2
ガラガラと、部室のドアを開ける頃には、

里緒菜から、涙は消えていた。

「早かったな…」

本を読みながら、美奈子は、里緒菜の方を見ずに、
声をかけた。

里緒菜は、部室を見回したけど、誰もいない。

「他のやつなら、帰したよ」

美奈子は、ページをめくる。

「どうせ…まだ、脚本ができてないしな…」

美奈子は本を閉じると、里緒菜に向かって、

「鍵をかけて」

「え?」

驚く里緒菜に、呆れながら、美奈子は言った。

「あの鈍感が、帰ってくるだろが」

はっとして、里緒菜は、ドアの鍵をかけた。


「ったく…」

美奈子は、本を机に置くと、立ち上がった。

「お前は、悪くないよ。けじめは、つけてる」

美奈子はゆっくりと、里緒菜に近づき、

「なのに…辛いなあ…」

「部長…」

「でも、お前は頑張ってる」

美奈子は、里緒菜を抱きしめた。

ガタンと音がして、

ドアがノックされた。

「あれ…閉まってる…部長!」

直樹だ。

「飯田!今日は、もう終わりだ」

「え!?」

「さっさと帰れ!」

美奈子は叫んだ。
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