黄昏に香る音色 2
明日香は恵子ママに、心を教えられた。

心が大切なのは、音楽だけじゃない。

ビバ・ホーム。

数年前に、亡くなったジェームス・ブラウンが、ライブ中…

観客に伝えた言葉。

会場が感動に包まれた。

ノッテルかではなく、故郷を、家族を想う。

レゲエは、故郷…アフリカを目指した。

日本人は何を目指し、

何を想う。

日本人が、故郷を想う時は…。

それは…この国が、なくなった時かもしれない。

心を教えられたとき、

日本人は、日本人の音をつかむことができるかもしれない。

それは、まだ…

明日香もつかんではいない。

自分の音はつかめても、

すべての日本人を、代表するような音をつかもうとする人は、いない。




「おばさん…店終わったんだ」

2階から、香里奈が降りてきた。

「まだ起きてたの?」

「ううん。ちょっと目が覚めただけ…」

そう言うと、香里奈は大欠伸をして、

「おやすみなさあい」

また2階に上がっていく。

「おやすみなさい」

里美は、香里奈を見送りながら、

「あの子は…何をつかむのかしら…」

タバコをまた、吸おうとして、里美はやめた。


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