黄昏に香る音色 2
里美は、タバコを灰皿にねじ込むと、

カウンターから、ステージまで歩いた。

先日、香里奈がライブをやってから、使っていない。

折角ある場所。

音楽を奏でる場所。

里美は、ラリーハードの奏でる音に、身を任せながら、生バンドだけじゃなくて…

DJや、ラッパーを入れてもいいとは思っていた。

だけど…。

お客さんに聴かすというレベルは、なかなかいない。

その辺にあるクラブの音楽をメインにしたイベントも、

お客さんを楽しませることを、第一とした…パフォーマーは、ほとんどいないし、

ただ踊ったり、騒いだりする客も…音楽を楽しんでるという、雰囲気ではなかった。

(音楽は、自己満足…だけど…それで終わってはいけない)

ハウスや、ヒップホップ、ファンク。

次々に、自分達の音楽を作り出してきた

ブラックピープル。

その遥か後方で、形だけを真似る日本人。

機械など…物はいい。

音楽は…CDなどの商品であるけど…

心が必要だ。

ヒップホップやDJになることさえ、教室で習う日本人。

心を教えないと…。

里美が、音楽を教えるのをやめた理由は、

それだった。

(あたしは、恵子ママのように、心を教えられない)

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