黄昏に香る音色 2
「あんたを、狙ってたって!?」

ダブルケイに、帰ってきた香里奈の話を聴いて、里美は考え込んだ。

「神の啓示…考えられるのは…」

里美は、一枚のCDを鞄から取り出し、封を開け、

トレイにのせた。

「気になることがあったの…」

クリスティーナ・ジョーンズ。

音楽が流れる。

「お、おばさん?」

香里奈には、いきなりで訳がわからない。

「黙って、聴いてて…あんたなら、わかるはず…」

仕方なく、香里奈は音楽を聴く。

パーフェクト・ボイスと言われているらしい。

確かに…素晴らしい。

香里奈が思わず、聴き惚れていると、

「ここよ!」

里美が叫んだ。

「あっ…」

香里奈は気づいた。

まさか…。

「もう一度かけるわよ」

里美は巻き戻した。

この歌い方…。

フェイクの仕方は…。

「そう…あんたの癖よ。独特な…あんたの癖…」

里美は頷いた。

「そんな…」

「こんな癖…今まで多くの歌手を聴いたけど…誰もいなかった」

里美は、CDを止めた。

「この癖に気づくのは、長年…あんたの歌を聴いている者か…。この前のコンサートを聴いた者だけよ」



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