黄昏に香る音色 2
「かずちゃん…」

「確かに…啓介以上に合う相手は、いないけど…」

和美は一度、言葉を止め、

「だけど、啓介といたら…今のあたしはないの。今、アメリカにいく…あたしはいないの…」



「そうね…」

恵子もすぐに、言葉が出なかった。

「明日香ちゃんは、すごいわ。あたしは、振られたけど…あの子は一度、振ってるのよ」

「あの子はね…」

「わかってるわよ。ママ!あの子は、振ったんじゃなくて…自分で努力したのよ」

和美は目をつぶり、

明日香に語りかけていた。

そばにいなくても…。

「あの子は強いわ」

「そうね」

恵子は頷く。


「だけどね…ママ…」

和美の口調が変わる。唇を噛み締めた後、

「あたしは諦めたけど…諦めないやつもいるわ」

和美の口調は力強く、

心配気に、話す。

「いつか…諦めない…往生際の悪いやつもでてくるわ。きっと…」


「かずちゃん…」

「その時は、ママ…。明日香ちゃんを守ってあげて」

「かずちゃん…」

恵子は、言葉に詰まり…

「あたしはもう、おばさんよ…。あなたが…守ってあげない」


「あたしは…」

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