黄昏に香る音色 2
「ああ…あのジュリアさ」

扉の横から、タバコの煙が漂ってきた。

啓介が振り向くと、

壁にもたれた男がいた。

「ジャック…」

「久し振りだな…KK」

タバコを吹かしながら…ジャックは、啓介に笑いかけた。

「やっぱり…1人で来たのね。啓介」

ステージの影から、ティアが出てきた。


「ティア…」

啓介はティアの方に、体を向けた。

「お元気そうで…怪我は、大丈夫かしら?」

「貴様…」

啓介は、ティアに刺された脇腹を押さえながら、

ティアを睨んだ。

「あら。こわい」

ティアは、クスッと笑った。

そして、ステージを降りると、啓介にゆっくりと近づいてくる。

「ティア…。お前の今回の目的は、何だ?」

「あたしの目的は、変わらないわ。でも…今回は…」

ティアは、啓介の目の前で、止まった。

「間近で、聴いてみない?」

ティアは、啓介の耳元で囁く。

「パーフェクト・ボイス…を」

啓介は、ステージ上のジュリアを見た。

「あの子に、音楽を教えたのは…啓介。あなたでしょ」

ちょっと見ない間に、見違えるように、美しくなっていた…ジュリア。

啓介は、ティアを睨み、

「音楽を教えたのは、俺じゃない!マルコだ!」

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