黄昏に香る音色 2
エンドレススマイル
雨の滴が、階段を上っていく。

そんな音が、聞こえそうな静けさの中、

天城志乃は、

CDを見つめていた。

パーフェクト・ボイス。

ジュリア・アートウッドの死は、歌手としての運命を、暗示させた。

使われて、消費されるだけの歌手になるのか。

それとも、

ただ歌を歌い、言葉や想いを伝えていく歌手になるのか…

流行とか、人気を気にしない歌手。

ネット配信など、絶対されない歌手。

それとも、

そんなすべてを…突き抜けた存在に、ならなければならないのか。

だけど、

そこまでたどり着いた歌手は、みんな…

すぐに亡くなっている。

まるで、永く生きることを許されないみたいに。

日本は…本当に歌える場所が少ない。

各ライブハウスも、マニアックであり、

音楽をただ、純粋に楽しむ場所ではない。

金額も高いし、

そこに来た者にしか、

音楽を聴かせられない。

あたしから、近づくすべはないの。

音楽か溢れているけど、

本当の音楽がかからない国。

自分たちの音を持たない国。

志乃はため息をつくと、

ジュリアのアルバムを、そっと…倒した。

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