黄昏に香る音色 2
「パーフェクト・ボイスって…結局、何だったんだろ…」

香里奈は、カウンターにうずくまりながら、

里美の出してくれたオレンジジュースのストローを、くわえていた。

まだ営業前、

隣には、和恵が座っている。

里美は、グラスを洗う手を止め、音楽をかけた。

ジュリアの歌。

しばらく聴いてから…。

里美は、タバコに火をつけた。

「これは…夢の歌よ」

「夢の歌?」

里美は頷き、

「音楽に詳しくない人は、わからないと思うけど…各歌、それぞれが…有名な歌手の癖やフレーズでできている」

香里奈にもわからなかった。

首を傾げる香里奈に、

「あんたも、音楽やるんだったら…もっと勉強しなさい」

「はあ〜い」

香里奈の返事に、呆れながらも、

里美は言葉を続けた。

「ビリーやエラなど…有名な歌手の歌い方を、科学的に分析して…彼女たちの得意な曲に似た曲を、現代のビートに乗せて…再構築してる」

「それは…いけないことなの?」

「パクリや、盗作ではないけど…オリジナルではないわ」

里美は、タバコを灰皿にねじ込み、

「多分…二作目は作れなかったと、思うわ」


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