黄昏に香る音色 2
「今日。明日香と啓介さんが帰ってくると思うわ」

営業前のいつものダブルケイ。

香里奈が扉を開けると、里美が告げた。


「ママたちが!やったー!」

カウンターに座る和恵は手を上げて、喜んだ。

「そうなんだ」

香里奈は、服を着替えに、二階に上がった。

里美は静かに、タバコを吹かす。

すぐに、音を立てて、

香里奈が降りてきた。

「里美おばさん!どういうことなの!」

香里奈は、カウンター内にいる里美の前まで来た。

里美はタバコを吹かし、

香里奈を見ない。


「おばさん!」

香里奈が叫んだ。


店の扉が開いた。

「只今」


明日香と啓介が、店内に入ってきた。


「ママ!」


和恵は、カウンターから飛び降り、明日香に走り寄る。

「只今、和恵!いい子にしてた?」

明日香は、和恵を抱き締めた。




里美は、タバコを灰皿にねじ込むと、

「こういうことよ」

里美はカウンターから出て、明日香たちに近づいた。

「お帰り。明日香」

「里美…」

明日香は、和恵を離すと、

里美を見つめた。
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