黄昏に香る音色 2
「小さな子供に、必要なのは…愛情と安心」

明日香は、視線を前に向け、

「孤独や心配を与えては、いけないわ」

「ああ…」

「幸せだったと…家族の思い出を残したいの」

「ああ」

「大きくなって、外に出れば…大変なことばかり。だから、家族だけは絶対、気を安らげる場所でないと…」

啓介は黙って頷いた。

「いつか…自分で居場所がつくれるまで。家族が不安にさせては、いけないわ」





タクシーに乗り込みながら、

啓介は心に決めた。

いつか、その日が来るまでは、この真実は、封印しておこうと。


タクシーは、静かに動き出した。

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