黄昏に香る音色 2
香里奈は一人、学校の階段を降りていた。

恵美も祥子も、もちろん里緒菜も、部活だった。

香里奈だけ帰宅部だ。

降りる向こうに、和也がいた。

「よお」

和也は、香里奈を見上げ、軽く挨拶をした。

「藤木くん…」

香里奈は驚いた。和也に、声をかけられるのは、これが初めてだった。

「一人で帰りかい?」

香里奈は、階段を駆け降りた。

「みんな、部活だから…」

「そお」

和也は頭をかきながら、少しよそよそしく、

「速水さんは、部活やらないのかい?」

香里奈もよそよそしく、こたえた。

「き、興味があるのが、なくって…無理やりやるのも、失礼だから…」

香里奈は、和也の隣に立った。

やはり背が高い。

見上げてしまう。

「という藤木くんは…何かやってるの?」

「俺?…俺は…外の部活がいろいろ…」

「そっかあ!雑誌のモデルやってるものね」

「まあなあ~」

照れたように、和也は鼻の頭をかく。

「今日もあるの?」

「いや…今日は別用だ」

チラット腕時計を見ると、和也は、

「ごめん…もう行かないと」

和也は歩き出す。

「いってらっしゃい」

後ろ姿に、手を振る香里奈。

ふっと、和也の足が止まる。

ゆっくりと振り返り、

「速水!」
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