黄昏に香る音色 2
「そ、そんなこと〜な、ないよ」

香里奈は思わず、ベットから起き上がり、照れながら言った。

「そんなことないよ…。俺は、そう思っている」





静かに、電話を切った。

直樹は、バイトの休憩中だった。

もう帰る時間だったが、次のバイトが、遅れていた。

後一時間だけ、働くことになった。

扉を開けて、店に戻ると、

カウンターに、珍しい女の人がいた。

グラスを傾けながら、

女の人は、直樹の方を見た。

「お久しぶりです」

直樹が頭を下げると、

「この前は、ありがとう。あなたには、お礼を言ってなかったわね」

カウンターに座っているのは、志乃だった。


「この前?」

カウンターの中に入ると、直樹は、志乃の前に立った。

志乃はクスッと笑い、

「ダブルケイ」

一口飲んだ。


「ああ!」

直樹は思い出した。

志乃が、病院に運ばれた時…直樹もダブルケイにいた。

「でも、驚いたわ…あなたが、香里奈の彼氏だなんて…」

「か、彼氏だなんて…」

まだ人に言われたら、照れる。

「香里奈をよろしくね」

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