黄昏に香る音色 2
志乃は、グラスの中身を飲み干すと、コースターの上に置き、

指先で、そっと前に押した。

「マンハッタンを」

志乃は、直樹に微笑んだ。

「かしこまりました」

直樹は、シェイカーを取り出し、カクテルを作り出す。

その様子を眺めながら、

志乃は口を開いた。

「香里奈が、オーディションに出るの…知ってる?」

カクテルグラスをコースターに置き、

「失礼します」

シェイカーから、ドリンクを注ぐ。

「先程、電話でききました」

コースターにのったグラスを、指先で、

そっと志乃の前に、差し出した。


「ありがとう」

志乃は、グラスを手に取り、一口飲むと、コースターに置いた。

「どうして…受けるのかしら?」

志乃は直樹を見、

「理由…あなた、知ってる?」

「親友を、助ける為と言ってましたけど…」

直樹の言葉に、

志乃は納得した。

「相変わらず、甘い子ね」

志乃はそう呟くと、

マンハッタンを、一気に飲み干した。

「でも…ちょうどいい」

志乃は立ち上がり、

お金を払う。

「ありがとうございます」

直樹は、頭を下げた。

志乃は店を出る前に、

振り返り、

「あたしの妹を…よろしくね」

じっと直樹を見つめ、

「香里奈に何かあっても…そばにいてあげてね」

志乃の意味深な言葉に、心の中で、首を傾げながらも、直樹は、

「はい」

と、笑顔でこたえた。
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