黄昏に香る音色 2
未来への決意
「お母様!」

里緒菜は、母親の書斎のドアを力任せに、開いた。

「何事です!?」

母親は、いつもと雰囲気の違う娘に気づき、眼鏡を外し、ディスクの上に置くと、書類から目を離した。

訝しげに、里緒菜を見る。

里緒菜は、そんな母親にお構いなしに、

ただ深々と、頭を下げた。

「どうしました?」

顔を上げた里緒菜の表情は、清々しい。

「今回のことで…あたしは、決心がつきました。家を離れる決心が!」

「何を言ってるの?」

戸惑う母親。

「学費も、自分で稼ぎます。家出では、ありません!きちんと、連絡しますので、心配しないで下さい」

里緒菜はそう言うと、

部屋を出ていく。

「里緒菜さん!待ちなさい」

廊下に出ると、執事がいた。

里緒菜は微笑み、

「心配しないで。あたしは強くなるの!みんなに、心配をかけさせない。本当の…しっかりした女に、なるつもりだから」

執事はしばらく、

里緒菜の目を見てから、

頭を下げた。

「いってらっしゃいませ。お嬢様」

「ありがとう」

思わず、里緒菜の瞳から涙がこぼれた。

書斎から、母親が出てきたが、

執事が止めた。

「お嬢様!早く」

里緒菜は、走り出した。


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